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闘う選手会長・古田敦也を支えた将棋的思考法。 

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posted2004/12/16 00:00

 プロ野球選手会会長の古田敦也選手が、日本将棋連盟から三段免状を贈呈されたのは既報のとおり。古田は'95年に初段の免状を受けており、その腕前は確かなもの。棋力の向上もさることながら、球界の難局にあたってリーダーシップを発揮し、なおかつグラウンドでも好成績を残したベテランへ、慰労の意味も込めての“飛び級昇段”となった。

 「最近、あまり将棋の勉強してないんですよ。僕が三段なんていただいていいんですかねえ……」

 とまどい気味の古田ではあったが、免状の贈呈式では、将棋連盟会長・中原誠永世十段の指導対局を受け、堂々と“藤井システム”の駒組みを披露。「最新型をちゃんと勉強しておられます。おかしな手は全くなかった」と、永世十段からお墨付きをもらった。ちなみに“藤井システム”とは、藤井猛九段が考案した革命的な戦法で、並みの棋力では指しこなせないシロモノである。

 もともと古田と将棋の付き合いは長く、小学生のころに父親から手ほどきを受けたと言うから、野球歴ともそう変わらない。

 「親父は息子とのコミュニケーションの手段として将棋を選んだようです。駒を並べて挨拶をして、将棋を指し、駒を片付ける。そんな流れの中には、たとえ黙って向かい合っていても、いろいろな心のやり取りがありますからね。将棋の読みは野球の駆け引きとも似たところがあるので、知らない間に身についた将棋的な思考法にずいぶん助けられている気はします」

 '02年には、谷川浩司九段との対談集『心を読み、かけひきに勝つ思考法』(PHP研究所)も出版しており、古田の考える野球を陰で支える将棋の役割は、われわれが思う以上に大きいようだ。

 「ヤクルトでも将棋が流行った時期があって、以前はクラブハウスでよく指していたんです。最近は忙しくてなかなか機会がありませんが、それでも藤井(秀悟投手)あたりは、たまに挑戦してきます。戦績? もちろん圧倒してますよ!」

 11月の日米野球では、阪神の今岡誠、井川慶の挑戦を受けた。

 「井川が将棋に凝っているんですが、なかなか今岡には勝てないらしいんです。話をきいてみると、いつも棒銀(飛車先に銀を繰り出す攻撃法)でやられていると言う。で、ちょっとお手本をみせてやろうと思って今岡と指したんですが、どういうわけか負けてしまって(苦笑)。うまく受け切ったと思ったんですが、銀と交換した香車を意外なところで活用されてしまった。横で観戦していた井川は気まずそうな顔をしていました……でも次は絶対に負けません」

 今回の免状贈呈を発案した田中寅彦九段は、古田の棋風を「柔軟な受け将棋」と評する。

 「単純に攻めて勝てれば苦労はないんですが、そうはいかないところが将棋の醍醐味。古田さんは、常に相手との間合いを意識して指しておられるから、相手の言い分を通しながら、最後は自分が勝つように流れを作ることができる。これはもう充分に三段の域にあると判断しました。また、われわれプロに対しても、感想戦で堂々とご自身の意見をおっしゃる。棋書から得た知識だけでなく、自分で発想しているからこそできることだと思います」

 なにやら、一連の騒動での活躍を裏づけるような古田評だが、将棋というゲームを通して得たプロの感触だけに、真実味がある。もちろん来期も現役を続ける古田の目標は、三割三段三十本!?

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