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スピードスケート陣の不安は
拭い去れるか。 

text by

矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

PROFILE

photograph byTsutomu Kishimoto

posted2009/04/15 07:01

 3月12日から15日まで、カナダのリッチモンド五輪オーバルで行なわれたスピードスケート世界距離別選手権で、期待の日本勢が思わぬ惨敗を喫した。'96年の第1回を皮切りに今回で12回目となったこの大会で、日本勢が個人種目メダルゼロに終わったのは初めて。しかも、バンクーバー五輪会場で開催された“プレ五輪”だっただけに、選手や関係者の落胆は大きかった。

 最大の誤算は、W杯男子500m総合2位の長島圭一郎が、この種目で7位に終わったことだ。元世界記録保持者の加藤条治は12位。トリノ五輪4位の及川佑が6位。他の種目を見渡しても、女子1000mの吉井小百合が5位になったのが日本勢最高という大不振だった。

 フィギュアスケートは言わずもがな、今季はモーグルの上村愛子やスノーボード・ハーフパイプの青野令、ノルディック複合、ジャンプで日本勢が大活躍を見せた。それだけに、スピードスケートのふがいなさが際立ってしまう。

世界選手権惨敗の理由と、メンタル面での難題

 敗因のひとつとしてクローズアップされたのが、軟らかい氷への対応力不足だった。バンクーバーは海抜ほぼ0m。標高1000m以上のカルガリーやソルトレークシティーと比べて空気抵抗が大きいため、元々タイムは出ないだろうと予想されていたが、それに加え、今回新たに判明したのが氷の軟らかさだった。男子1500mを制した米国のシャニー・デービスは「ここの氷は遅い。氷を強く押さないと進まない。パワーと持久力が必要」と指摘。各国選手とも「脚にくる」「刃が埋まる感じ」と口をそろえた。

 だが、日本勢の敗因の本質は、リンク条件にあるわけではない。シーズン序盤のW杯で勝利を重ね、1月の世界スプリント選手権で総合2位となった長島は、「世界スプリントで満足してしまった自分がいて、気持ちが上がってこない」と危惧していた通り、最後まで精神面を整え切れなかった。全レースが終わった後、「氷については何も言うことはない。普通のリンクです。実力不足です」とさばさばしていたのはある意味、本音だろう。つまり、「どんな条件でも、しっかり滑ることのできる選手が勝つ。狙った大会で勝てないという問題を何とかしないといけない」と話す今村俊明コーチの言葉が本質を突いている。

背中で若手を引っ張る岡崎朋美のたくましさ

 1年後に控えたバンクーバー五輪に向けて重い不安を抱えてしまった日本勢だが、明るい材料もある。今季、その存在感をあらためて示したのが、37歳の岡崎朋美だった。シーズン終盤のW杯ソルトレークシティー大会では、4年ぶりに自己ベストを更新し、距離別選手権では女子500mで吉井に次ぐ8位となった。

「バンクーバーは海が近くて、空気が湿っている。高校時代を過ごした釧路に似ている。この会場は氷が軟らかいので、夏場にパワーをつけたい。(ハンマー投げの)室伏広治さんみたいにマッチョになる」と宣言する姿には、若々しさが漂う。

 岡崎の調整能力は素晴らしい。過去4度の五輪成績は、初出場のリレハンメルこそ14位だったが、長野では銅メダルを獲得し、ソルトレークシティー6位、トリノ4位。代表選考レースも含め、狙いを定めたレースで絶対に“外さない”のが強みだ。'07年の結婚後も、バンクーバーでのメダル獲得に向けて日々精進している岡崎。長野以来、3大会ぶりとなるメダル獲得を目指すベテランの姿が、日本スピードスケート陣全体のお手本になる。

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