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松坂獲りに見るRソックスの長期戦略。 

text by

李啓充

李啓充Kaechoong Lee

PROFILE

posted2006/12/07 00:00

 レッドソックスが、5110万ドルという、超巨額落札金で松坂大輔との独占交渉権を獲得した。

 ここ数年、レッドソックスは、「ヤンキースのような金の使い方はできない」と、補強戦線でヤンキースに競り負ける度に財力の限界を強調、ファンにも「我慢」を強いてきた。たとえば、昨オフはFAだったジョニー・デーモン、今季途中にはボビー・アブレイユーの獲得を巡って、ヤンキースに競り負けたばかりだ。また、相手は異なるが、一昨年のオフには、FAとなったペドロ・マルティネス獲得戦でメッツに競り負けた。

 それが、今回は、メッツの3800万ドル、ヤンキースの3000万ドル(数字はニューヨーク・デイリー・ニューズ紙)をはるかに凌駕する、5110万ドルで松坂を競り落としたのだから、ファンや、MLB関係者が驚いたのも無理はない。ただ財力があることを示しただけでなく、その気になればヤンキースを上回る金の使い方さえすることを、まざまざと見せつけたのである。

 しかも、今から振り返ってみると、マルティネス、デーモン、アブレイユーの獲得合戦にしても、本当は競り負けたのではなく、欲しくもない選手の競りに参加することで、メッツやヤンキースに意図的に出費を強いた可能性さえ考えられる。松坂獲りという長期的目標を達成するために、自分は資金を節約する一方で敵には金を使わせたという、穿った見方が成り立つのである。

 私がこんなことを考えるのも、松坂獲りにかけたレッドソックスの執念の強さが、5110万ドルという、あまりにも常軌を逸した金額に象徴されているからである。しかも、この間、出費を惜しんだがためにレッドソックスが競り負けた選手はたくさんいたが、出費をいとわず獲得した選手が、実は、松坂の他にも、もう一人いた。それは誰かと言うと、昨オフ、マーリンズから獲得したジョシュ・ベケットだ(26歳、今季16勝11敗。'03年のワールドシリーズ最終第6戦でヤンキースを完封、優勝投手になった)。交換要員にハンリー・ラミレス(今季ナ・リーグ新人王)、アニバル・サンチェス(今季ノーヒット・ノーランを達成するなど急成長)と、とびきりの若手有望選手2人を惜しげもなく差し出しただけでなく、マーリンズが年俸の高さ故に持て余していたマイク・ローウェルさえも引き取った。

 と、ここまでのレッドソックスの補強パターンを見ていると、「ヤンキースのような金の使い方はできないし、する気もないが、例外は、若いエース投手の獲得、出費に糸目をつけない」という方針が見えてくる。「若いエース投手を3人以上擁することで長期覇権の基礎を築く」という戦略がその背後にあることは容易に察しがつくが、この戦略のお手本は、'90年代以降のブレーブスだ(ジョン・スモルツ、トム・グラビン、グレッグ・マダックスの若いエース3人を揃えたことが、14年連続地区優勝の基礎となった)。

 松坂の入団交渉はこれからだが、入団が決まった場合、来季のレッドソックス先発陣は、ベケット、ジョナサン・パペルボン(今季はクローザーとして、セーブ35、防御率0.92の活躍。来季は先発に転向)に加えて松坂と、1980年生まれのエース投手(いずれも右腕)が3人揃うことになる。長期覇権を目指すレッドソックスの戦略が成功するかどうかは、「松坂世代」3人のエースの右肩にかかっているのである。

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