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高橋大斗、復活の3位。
バンクーバーは見えたか。 

text by

折山淑美

折山淑美Toshimi Oriyama

PROFILE

photograph byToshimi Oriyama

posted2008/12/18 00:00

 「まさかここで3位になるとは……」

 フィンランド・クーサモで開幕したノルディックスキー複合のW杯個人第2戦。表彰台に立った高橋大斗の正直な感想だった。ジャンプの好調さは自覚しながらも、後半の距離(クロスカントリー)にはまったく自信を持てなかったからだ。

 10月のヨーロッパ合宿でひいた風邪が長引き、走りの練習が本格的にできるようになったのはフィンランド入りしてからだった。特に開幕1週間前に行われた記録会ではジャンプでダントツのトップに立ちながら、距離で他の日本人選手全員に完敗するほどの絶不調。W杯第1戦では、ジャンプで3位につけ、粘りの走りで昨季の最高位と並ぶ7位に入ったものの、この日も同じような走りができるとは思っていなかった。

 第2戦は前半のジャンプで運にも恵まれた。踏み切り直後のエリアは追い風で、ジャンプ台の下の方は向い風。中ほどは風がぶつかって巻き、エアポケットが発生する極めて難しい条件。しかし追い風が弱まった時にスタートした高橋は、下の向かい風を受けることに成功し、133.5mでトップに立った。2位のヤンネ・リーナネンに17秒、3位のアンシ・コイブランタ(ともにフィンランド)に30秒の差をつけ、他の距離が強い選手たちには2分以上の大差をつけたのだ。

 「3km地点で後ろのふたりに抜かれたけど、それは予想していた展開。抜かれた瞬間に付いていけないとは考えなかったですね。『運がよければ』と思っていました」

 そこからは「4位以下の選手に追いつかれないように」とだけ考えて滑り、'05年1月の札幌大会以来となる表彰台をゲットした。

 '07年2月の世界選手権のジャンプで転倒して左上腕と左ひざを骨折した高橋は、昨季、ジャンプへの恐怖心が抜けずに苦しんだ。風が強いときはジャンプ台へ上がるのも嫌になるほどだった。今年に入ってから徐徐に克服し、夏場には自信を取り戻してきたが、今度は今季からのルール変更が高橋を悩ませた。

 昨年まではジャンプ2本と距離15kmの個人戦、ジャンプ1本と距離7.5kmのスプリントの2種類だったが、今季からジャンプ1本と距離10kmに一本化された。テレビ放映の時間枠に入れやすいという理由からだ。ラージヒルの飛距離点は1mにつき1.2点から1.5点に増えたが、10mの差をつけても距離で12秒のアドバンテージが増えるのみ。走るのが苦手な選手には不利な試合形式になった。

 「ジャンプを飛べてなおかつ走れる選手じゃなければ生き残れないと思い、これまでも距離を強くしようとやってきたんです。でも僕はなかなか速くならなかったんですね」

 こう言う高橋は今季、「新ルールで世界に通用しないようだったら競技を辞めよう」という気持ちでこのW杯に臨んでいた。

 「今後は今日のように運良くはいかないだろうけど、ジャンプもしっかり飛べて、モヤモヤしていたものがスッキリした感じはありますね。去年のように10位にも入れない状況だと『バンクーバーでメダル』なんてとても口にできないけど、この3位で『何が起きるかわからない』と思えるようになった。以前のいい時のように14番から15番のタイムで走れるようになれば、面白い勝負もできると思うんです」

 バンクーバー五輪へ向けても、自分を勇気づけられる3位だった。

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