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ドバイでウオッカ惜敗。世界戦が魅力の春競馬。 

text by

島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

PROFILE

photograph byToshiyuki Murata

posted2008/04/17 00:00

 3月29日、土曜日。UAE・ドバイのナドアルシバ競馬場でドバイワールドカップ諸競走が行われた。

 ダート王のヴァーミリアンがドバイワールドカップ(G?、ダート2000m)で昨年のアメリカ年度代表馬カーリンと激突し、牝馬のダービー馬ウオッカが、新しい鞍上に武豊を迎えてドバイデューティフリー(G?、芝1777m)に臨むなど、日本のファンにとって見どころの多いイベントとなった。

 日本との時差は5時間。朝方は肌寒いくらいだが、日中は強い陽射しがチリチリと肌を焼く。いくらか暑さが弱まった午後6時15分、4頭の日本馬の先陣を切り、イイデケンシンがUAEダービー(G?、ダート1800m)に出走した。同馬は果敢にハナに立つも、直線入口で手応えがなくなり、8着に敗れた。

 陽が落ちて、場内が焦げ臭くなるほど派手に花火が打ち上げられたあと、第5レースのドバイデューティフリーが行われた。速いスタートから好位につけたウオッカは、直線、外からストライドを伸ばし、前をかわしにかかった。が、惜しい4着。

 「一瞬、勝ったと思いました。前半ちょっとリキんでいたぶん、最後は伸び切れなかった。でも、走る馬ですよ」と武は、悔しさと満足感の入り混じった表情で言った。なお、前走の京都記念でウオッカを完封したアドマイヤオーラは9着だった。

 そして最終の第7レース、総賞金600万ドル(約6億円)という世界最高額を誇るドバイワールドカップ。昨年のこのレースで4着に敗れてから力をつけ、日本でG?を4連勝したヴァーミリアンは、前半から流れに乗れず、よもやの最下位12着に終わった。勝ったのはカーリン。

 「何が敗因かわかりません。こんなヴァーミリアンは初めてです」

 と首を傾げた武は、記者に「カーリンは強いですね」と言われると、「確かに強い。でも、あきらめませんよ。いつかこのレースを勝ちたいですね」と口元を引き締めた。

 彼のみならず、この地に来た関係者は、敗戦を受け入れながらも、打ちひしがれてはいない。「次、頑張ります」という言葉は決まり文句ではなく、具体的なスケジュールとして「次」の世界戦を見据えている。

 今年で13回目を迎えたドバイワールドカップは、今や、日本の関係者やファンにとっての恒例行事になっている。ジャパンカップダートやフェブラリーステークスを勝つと、ここに来るのは既定路線になったと言ってもいい。このレースのステイタスが上がるにつれ、日本のダートで強い馬のステイタスも上がり、かつては蔑称のように使われた「ダート馬」という言葉が死語になりつつある。また、ドバイの芝のレースも年々レベルが高まり、日本の人馬は、ここで手合わせした人馬と、イギリスのキングジョージ?&クイーンエリザベスステークスやフランスの凱旋門賞、そしてジャパンカップなど世界各国のG?で再戦するケースが今後ますます多くなるだろう。

 かつては、クラシック本番を間近に控えた3月末、国内の古馬戦線は地味になりがちだった。が、ドバイワールドカップ諸競走が日本の競馬のローテーションに組み込まれたことにより、春競馬の醍醐味が格段に増した。これら「身近な世界戦」のおかげで、関係者もファンも普段から「世界の中の日本」として競馬をしていることを実感できるようになった。「世界の壁」の内側に足を踏み入れた日本の人馬が頂点に立つ日は、そう遠くないはずだ。

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