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シンクロに非常事態!中国に敗北しコーチ辞任。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2008/05/29 00:00

シンクロに非常事態!中国に敗北しコーチ辞任。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

 シンクロナイズドスイミングの日本代表が、混迷に陥っている。

 発端は4月中旬に北京で行なわれた五輪最終予選だった。この大会で日本は鈴木絵美子、原田早穂のデュエット、チームともにスペインに次いで2位に入り出場権を獲得したが、内容面から厳しい現実を突きつけられることになったのである。

 日本は両種目ともに同調性に欠けるなど演技をこなしきれなかった。点数は伸びずメダル争いのライバル、スペインに大差をつけられた。さらに衝撃だったのは、開催国の出場権があるため非公式に参加した中国のデュエット、蒋??、文文の双子にも点数で敗れたことだった。世界最強のロシアは出場権をすでに獲得していて不出場。つまり日本は現在、デュエットで世界の4番目であることが明らかになったのだ。チームは世界で3番手だが、「(チーム種目は)手の内を隠す」(井村雅代中国代表ヘッドコーチ)ことからエントリーしなかった中国のチームの伸びによっては、チームもメダルを失いかねない。

 5月2日から5日まで行なわれたジャパンオープンでも、日本代表はデュエットで振り付けを間違えたりチームでも選手同士の距離がそろわないなどミスがいくつも生じた。

 だが本当の問題はミスが多いことでもスペインに差をつけられている現実でも、中国に抜かれたことでもない。北京へ向けて練り上げたプログラムに選手の能力が追いつかないこと、いいかえれば選手の能力に見合わないプログラムを進めてきたということが判明した点にある。

 ジャパンオープン後の選手たちの声が物語っている。

 「崖っぷちどころか崖から落ちているような状態。このままではメダルをなくしてしまいます」(鈴木)

 「疲れて(動きがお互いに)合わないです」(青木愛)

 金子正子シンクロ委員長も今の日本代表をこう見ていた。

 「演技の難度が高すぎる。(プログラムを)もう一度考えないといけないです」

 きわめつけは、ヘッドコーチの友松由美子氏が、今後の指導に自信をもてないことから五輪最終予選後に辞任したことだ。本番3カ月前とは異例の時期である。

 日本代表は、昨春の世界選手権後、コンテンポラリーダンスの第一人者に依頼し、細かな素早い手足の動きに磨きをかけ芸術性を高めたプログラムを作り込んできた。

 意図は理解できる。体格に劣る日本が、素材に恵まれた海外の強豪と戦うためには、独自の工夫を凝らさなければならないからだ。だが、高い理想も実現できなければ意味はない。理想と現実の間に計算違いがあったのである。

 残り時間にゆとりのない今から勝負に持ち込むために必要なのは何か。井村雅代氏は以前こんなことを言っていた。

 「(コーチは)大会までの残り時間を考えて、やれることやれないことを整理して割り切って取り組むことも大事」

 指導者が、大会までのスケジュールを横睨みしながら生かす部分と見切る部分をいかに見極められるか。これまですべての五輪でメダルを獲得し、合計で銀4、銅7個を積み上げてきた「お家芸」の北京はそこにかかっている。

 幸い選手の意気は落ちていない。鈴木はこう決意を新たにした。

 「このままでは日本は終わらないことを見せたいです」

■関連コラム► 【シンクロ界の女王】井村雅代の新たなる挑戦。 (2008年1月31日)
► まさかの銀メダル。シンクロが抱える課題。 (2007年1月11日)

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