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K-1 MAX日本人対決、
衝撃的ダウンの必然。 

text by

布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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photograph byEssei Hara

posted2008/10/23 00:00

K-1 MAX日本人対決、衝撃的ダウンの必然。<Number Web> photograph by Essei Hara

 10・1『K−1ワールドMAX~2008世界一決定トーナメント決勝戦~』は、魔裟斗の5年ぶり2度めの優勝で幕を閉じた。準決勝、決勝ともダウンを喫しながらの大逆転劇。どちらが勝ってもおかしくない白熱したシーソーゲームだった。

 最大のクライマックスが訪れたのは準決勝で実現した魔裟斗vs.佐藤嘉洋の3ラウンド佐藤が会心の右ストレートで魔裟斗から衝撃的なダウンを奪った瞬間だろう。典型的な蹴りの選手と見られていた佐藤が、ハードパンチャーとして有名な魔裟斗を、相手のお株を奪うようなパンチで倒したのである。

 佐藤を育てた名古屋JKFの小森次郎会長によれば、以前佐藤がブアカーオにKO負けした時の右ストレートを佐藤用に盗んで改良した技術なのだという。

 「KO負けしたからといって、タダでは負けませんよ」

 魔裟斗陣営にとっては大きな誤算だった。長年魔裟斗にボクシングを指導する飯田裕トレーナーの証言。

 「魔裟斗君と佐藤君のボクシングテクニックを比べたら、阪神とPL学園ほどの差がある。だから僕は魔裟斗君に(佐藤の)パンチは見るなという指示を出した。蹴りのことはわからない僕から見たら、佐藤君は蹴りの方がずっと怖かったですからね。明らかに僕の作戦ミスです」

 右を効かせる伏線もあった。1R開始早々、魔裟斗のラッシュに合わせてタイミングよく決めていたカウンターのヒザ蹴りだ。

 「佐藤とはスピードが違いすぎる」

 日本人頂上対決が決定して以来、魔裟斗は何度かスピードで佐藤を翻弄すると示唆した。案の定、実際に対峙してもスピードは遥かに魔裟斗の方が上だった。それなのに、なぜ佐藤のヒザは魔裟斗のボディに突き刺さったのか。以前、小森会長はスピードとタイミングの関係について佐藤にこんな話をしたという。

 「扇風機の羽の側面にピタリと指を当てることができたら、動きは止まる。でも指が羽の表面を触ってしまったら、跳ね返されてしまう。ヒザもその指と一緒だよ」

 佐藤は独特の間合いも武器にした。

 「普通185cmも身長があったら、もっと遠い間合いをとる。でも佐藤は最初から175cmくらいの間合いで闘う。相手からしてみたら、確実にパンチや蹴りが当たる距離です。でも、そうした攻撃は必然的にモーションが大きくなるので、向こうの動作を察知した瞬間、佐藤はヒザを合わせればよかった」(小森会長)

 魔裟斗を窮地から救ったのは、持ち前の打たれ強さと勝負強さ。ダウンを奪われてもすぐ反撃に転じ、最後まで勝負を諦めない姿勢を貫いた。アルトゥール・キシェンコとの決勝も延長までもつれ込んでの判定決着。決戦2カ月前に実施した伊豆キャンプでの徹底した走り込みで下半身を強化していたのに加え、決戦6日前の公開スパーでは仮想佐藤のヘビー級選手と互角以上に激しく打ち合っていたことが思い出された。

 K−1史上に残る名勝負に唯一水を差したのは、本戦をドローとしたジャッジだった。本来なら優勢な方が必ず10にならなければいけないのに、なぜルールブックにはない9−8というスコアをつける者がいたのか。そのスコアを正当化してすぐルール改定を口にする関係者がいたことも気になった。その場でイジれたら、ルールではない。これでは完全燃焼した魔裟斗も、実力でエースに肉薄した佐藤も浮かばれない。

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