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“勝ちたい気持ち”は、時に勝負の魔物と化す。 

text by

三田村昌鳳

三田村昌鳳Shoho Mitamura

PROFILE

posted2005/12/22 00:00

 プレーヤーは誰しも勝ちたいと思うもの。だが、勝ちたいという気持ちが、かえってプレーヤーの落とし穴になってしまうこともある。日本男子ツアー最終戦・日本シリーズJTカップでは、そうした勝負の難しさを再認識することができた。

 今年で42回目を迎えた日本シリーズは、今季ツアー優勝者、賞金ランク25位以内など出場資格が厳しく、選び抜かれた者しか出場できない大会だ。歴史と名誉ある大会だけに、選手たちの勝利への意欲も大きい。

 その最終日は、8アンダーの首位・今野康晴を1打差の横田真一と宮里聖志が追う展開で幕を開けた。

 3人が組む最終組の第1ホール。一際暖かい声援が送られたのは、初出場の宮里に対してだった。

 2004アジア・ジャパン沖縄オープンでツアー初優勝し(今季に加算)、「日本シリーズは、ずっと出たかった大会」と意気込みを語っていた28歳の宮里聖志。妹の藍が同じ週の米女子ツアー最終予選会で、首位を独走したことも話題に拍車をかけ、「この大会に優勝して長期シードが取れれば、米ツアーの予選会に行きたい」と夢を膨らませていた。

 だが実際に優勝をさらったのは、最終日を5バーディー、2ボギー、通算11アンダーでフィニッシュした32歳の今野だった。

 勝負のポイントとなったのは序盤戦。3番ホールで宮里がボギーを叩き、横田がバーディーを取る。続く4番ホールでは、今野と横田がボギーを叩いた。

 今野は優勝会見で語っている。

 「4番ホールまではショットのタイミングが合わなかったけど、4番でボギーを叩いたことで、かえって気負いが吹っ切れましたね。5番からはショットの調子も戻ってきました」

 今野は、バーディーではなく、ボギーで自分のペースを取り戻したというのだ。事実、4番ホールでボギーを叩いたあと、7、8、9番と連続バーディーをもぎ取っている。対して宮里は、6番でバーディーを取ったものの、8、9、10、11番と連続してボギーを叩いてしまい、優勝戦線からはじき出されてしまった。

 「ゴルフは、ほんとうに怖いゲーム。勝ちたいと思えば思うほど、魔物に邪魔される。一度歯車が噛み合わないとなかなか修正できない。それが今日の宮里君のプレーだった」

 と、テレビ解説をしていた青木功が語っていたが、その通りだと思う。

 プレッシャーはむろん今野にもあったはずだ。勝てば獲得賞金は1億円を突破し、賞金ランキングでも片山晋呉に次ぐ単独2位に浮上する。だが、今野は終始マイペースで勝ちたい気持ちを飼いならし続けた。

 象徴的だったのは、17番ホール、535ヤード、パー5。ここは第1打が難しい。飛距離と狙いどころが的確でないとイーグルやバーディーを狙えない。左に林があり、そこへ放り込んでしまっては大怪我になる。首位を走る今野としては、右の土手を使ってフェアウェーに戻す安全策を選びたくなるもの。だが、今野は「怖がらずにフェアウェーの真ん中を目がけて、ストレートボールを打てた」ことでバーディーを奪取。勝利を決定づけた。

 勝ちたい気持ちに押しつぶされてしまった宮里聖志に対し、勝ちたい気持ちをコントロールし続けた今野。

 ここのところ女子ツアー人気に押され気味だった男子ツアーだが、日本シリーズでは、チャンピオンズ・トーナメントにふさわしいゴルフゲームの醍醐味を見せてくれたと思う。

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