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ACL王者ガンバが制した天皇杯で
見えたもの。 

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猪狩真一

猪狩真一Shinichi Igari

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photograph byShigeki Yamamoto

posted2009/01/16 04:04

ACL王者ガンバが制した天皇杯で見えたもの。<Number Web> photograph by Shigeki Yamamoto

 ガンバ大阪と柏レイソルの激突となった元日の天皇杯サッカー決勝。準決勝に続き、スコアレスのまま延長戦にもつれ込んだタフなゲームを、ガンバは、不振からスタメン落ちを喫していたストライカー播戸竜二の劇的な復活弾で制した。

 これで'08年のガンバは、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)と天皇杯の2冠王者に。そしてリーグ戦で逃した来季のACL出場権も、この優勝で手にすることになった。

 トヨタ・クラブW杯の初戦から3週間弱で6試合という超強行日程の中、ガンバの故障者は増える一方だった。彼らの気力をつなぎとめたものは言うまでもなく、クラブW杯につながるACLの出場権という巨大な“副賞”。マンチェスター・Uと刃を交えた、あの得難い経験を再び味わいたい。そんな欲求が生まれた直後に天皇杯に突入したことは、日程の過密さを相殺して余りある強力な追い風だったとも言える。

 だがもちろん、精神力だけでは試合には勝てない。天皇杯の勝ち上がりで彼らが発揮したのは、堅牢と表現できるほどの守備力だった。

 疲労の色が濃くなり、中盤での追い回しが難しくなっていた横浜F・マリノスとの準決勝では、ゴール前で跳ね返す守備を貫徹。素早いワンツーや横パスで揺さぶられても動じず、最後のシューターをつかまえてはシュートブロックを連発した。

 結局、クラブW杯後の天皇杯3試合は合計330分で失点1。DFリーダーであるキャプテン山口智は、それはクラブW杯の効果ではないと言いつつも、守備の進歩に対する手応えは感じていたようだった。

 「行くところと行かないところを間違うことが少なくなって、致命的な状況がすごく減りましたね。それに、中盤の選手が僕らの前でうまく時間を使わせてくれるので、いろいろなことをイメージしておける。だから多少後手に回っても、いいポジションを取ってさえいれば何とかなる」

 相手の崩しのパターンを予測し、対応策を準備しておける余裕。それが進歩の要因というわけだ。

 一方、山口とは逆に、クラブW杯の経験が、守備の粘り強さや悪い時間帯を凌ぐ試合運びの上手さをもたらしたと考えている選手たちもいる。MF橋本英郎もそのひとりだ。

 「それは“クラブW杯効果”としかいまは言えないですね。僕らはずっと、勝負弱いと言われ続けてきたチーム。だから、この大会で勝負強さを出せたことは本当に嬉しかった」

 選手たちの見方も割れているように、天皇杯でのガンバの変化がクラブW杯効果によるものなのかどうかは定かではない。だが、彼らが再びクラブW杯の舞台に立ちたいと願い、その入り口であるACL出場権の獲得のために気力を振り絞って戦ったことは確かな事実だ。

 しかし、そのプラチナチケットがかかった天皇杯というカップ戦は、指摘され続けてきた問題を手つかずのまま延々と放置している。

 今大会もJ1勢の天皇杯初戦は、優勝争いや残留争いという、クラブにとっての最大の懸案が大詰めを迎えた時期に組まれ、代表戦と同じ週に開催された2戦目では、中心選手が出場できないチームもあった。そして12月には相変わらず、既に解雇が決まった選手たちの戦いが続く。

 ACL出場権という甘美な報酬と、全力で戦うことを難しくする数々の足枷。天皇杯はいま、アクセルとブレーキを同時に踏めと言うような矛盾をJクラブに押し付けている。

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