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連立から再び二項対立へ動き出した格闘技界。 

text by

布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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photograph byHideki Sugiyama

posted2008/02/28 00:00

連立から再び二項対立へ動き出した格闘技界。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

 この春、日本格闘技界の勢力図が大きく様変わりしようとしている。まず3月5日には新興MMA(総合格闘技)イベント『戦極』(せんごく)が旗揚げする。すでに吉田秀彦vs.ジョシュ・バーネットという大一番が決定。さらにPRIDEライト級王者だった五味隆典、昨年大晦日のvs.秋山成勲で大いに名をあげた三崎和雄の参戦も決まった。将棋に例えると、強力な王将、飛車、角が揃った格好だ。

 今年で39歳になる吉田だが、相変わらず知名度は抜群。15カ月のブランクが気になるところだが、他に例を見ない勝負勘を持ち合わせている男だけに、アメリカMMA界の大物との一戦は大いに期待できる。昨年2月のPRIDE33以来、実戦から遠ざかっている五味の復帰も楽しみだ。アメリカ最大のMMA組織UFCを主戦場にするか、それとも国内に踏みとどまるか。昨年までなかなか次の道を選択できなかったが、最終的に日本国内での再起を選択した。

 昨年のベストバウトというべき激闘を秋山と繰り広げた三崎はアフガニスタン出身初のMMA世界王者と対戦する。観客が三崎に求めているのは秋山戦で見せた喧嘩魂。結果とともに内容を問われる一戦になる。

 戦極のキーワードは“公明正大”。PRIDEが闇社会との付き合いを噂されて消滅の道を辿ったため、その轍を踏まないようにスポンサーには一部上場企業が並んだ。さらに戦極のみならず、他のMMAイベントの統括も目指す組織として発足した『日本総合格闘技協会』会長には、国際レスリング連盟の福田富昭副会長が就任。アマスポーツ界との太いパイプを結ぶとともに、コミッション委員会も設けて試合の運営やルールにも厳しい目を光らせることになった。今後、2カ月に一度開催予定の大会を重ねていく中で、戦極は格闘技のステータス向上を目指す。

 一方で、別の大きな動きもある。昨年末、K−1(主催FEG)と旧PRIDE派が合体する形で実現した大連立の潮流はさらに大きくなり、ついに一本化されることになったのだ。その名は『DREAM』。運営は旧PRIDE派に全面的に委託される一方で、FEGはMMAの表舞台から完全に撤退して国内外のK−1の運営に専念することになった。

 3月15日に行なわれる第一戦の目玉はDREAMライト級GP。これは昨年春にPRIDEがUFCの親会社に買収された影響で発表されながらも実現しなかったPRIDEライト級GPとHERO'Sミドル級GPの合体版だ。両イベントの主力勢が16名集結。大会名通り、3月の開幕戦から夢の対決が続出することになるだろう。昨年大晦日に実現するはずだった青木真也vs.J・Z・カルバンもついに実現する。このライト級GPとは別に、DREAMは85kgを制限体重にしたミドル級GP(仮称)も開催予定だ。笹原圭一イベントプロデューサーは言う。

 「MMAの中心地がアメリカに移った現在、我々は彼ら(UFC)にできないことつまり軽量級や中量級での夢の対決を見せることで差別化を図っていきたい」

 DREAMの強みはTBS系での定期放送が決定したこと。一方、戦極の方はスカパー!で放送される。いまのところ両団体に大きな対立は見えないものの、お互い一線を画している状況だ。このまま大人の関係を保ち続けるのも、歩み寄るのもいい。ただ、激しい興行合戦の末に尻すぼみという愚かな歴史を繰り返すことだけはやめてほしい。

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