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ミルコのUFC参戦で、総合はどうなるのか。 

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布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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posted2007/01/25 00:00

 昨年9月、PRIDE無差別級GPを制したミルコ・クロコップがUFCに移籍した。UFCは '93年10月、アメリカでスタートした総合格闘技イベントの草分け的存在。金網に囲まれた八角形の試合場オクタゴンを使うのが特徴だ。

 プロ野球選手が大リーグを目指すように、日本人格闘家にとってUFCは憧れの舞台だった。実際宇野薫、高阪剛らはUFCにレギュラー参戦することで、一流の称号を得た。

 しかし日本でスタートしたPRIDEが台頭することで、UFCの価値は下落。国内外を問わず総合格闘家たちはみなPRIDEのリングを目指すようになった。かつてUFCヘビー級王者として君臨したジョシュ・バーネットが第2のホームリングとしてPRIDEを選んだことはそれを如実に物語っている。

 再びUFCが上昇気流に乗るきっかけを作ったのは、 '05年1月にスタートした『ジ・アルティメット・ファイター』だ。これは総合格闘技版の『ガチンコ・ファイトクラブ』。16名の選手たちの涙と汗にまみれた共同生活を見せながら、試合も行って敗者を振り落としていく。この育成番組が爆発的な反響を呼ぶことで、UFCも完全に息を吹き返した。

 少なくとも21世紀になってからの総合格闘技界はイベント数が多い日本を中心に回っていたが、今のUFCの勢いを見ていると、いつアメリカに覇権を奪われてもおかしくない状況だ。奇しくも昨年大晦日には、今まで日本の総合格闘技界を支え続けた桜庭和志と吉田秀彦が揃って惨敗を喫した。アメリカでは昨年5月、UFCの黎明期を支えたホイス・グレイシーがUFCウェルター級王者マット・ヒューズにTKO負け。国内外を問わず総合格闘技界は過渡期を迎えているのかもしれない。

 そうした世界的な流れを考えると、ミルコの移籍は納得がいく。UFCのファンはストライカー(打撃系格闘家)を好む傾向があるが、パンチ系の選手が多いため、キックボクサー出身のミルコは歓迎されるだろう。ミルコほど鮮やかなハイキックを打つ選手はオクタゴンにいない。

 ミルコのように移籍する者がいれば、とどまる者もいる。昨年12月31日の男祭りでマーク・ハントを相手にPRIDEヘビー級王座防衛に成功したエメリヤーエンコ・ヒョードルはPRIDEと再契約を結んだ。同日開催されたDynamite!!で初めて総合格闘技ルールに挑戦したチェ・ホンマンも大会前は移籍話が流布したが、最終的にK−1に残留した。いずれも破格の条件で再契約したといわれている。

 隣の芝生が青く見えたら、他の競技からいい人材が集まる。Dynamite!!でレスリングの五輪金メダリストのイストバン・マヨロシュが初めて総合格闘技に挑戦したのはいい例だろう。もっともイストバンは山本“KID”徳郁の打撃の前に成す術もなく敗れた。他の競技の肩書きだけで勝てるほど、現在の総合格闘技は甘くない。総合格闘技には独自のスキルが生まれつつある。

 ただ、一口に総合格闘技といっても、大会によってルールは微妙に違う。UFCではPRIDEでミルコが得意としていた顔面へのサッカーボールキックは反則。しかしながらPRIDEで反則のヒジ打ちはOKだ。臨機応変に対応出来なければ生き残れない。PRIDEとUFCを重りとする総合格闘技界の振り子が微妙に動く中、ミルコは2月3日のUFCデビュー戦へと向かう。

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