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24年ぶりのベスト8に導いたセッターの配球。 

text by

市川忍

市川忍Shinobu Ichikawa

PROFILE

posted2006/12/21 00:00

 12月3日に幕を閉じたバレーボール世界選手権で、全日本男子が24年ぶりに8位入賞を果たした。

 日本戦に限り、すべての試合開始が同じ時刻に設定されていたり、ホーム特有の熱い声援が後ろ盾になったりと、自国開催の日本が有利な立場に置かれていた事実は否定できない。同じグループにランキング下位国が多く含まれていたために全日本の運の良さを指摘する声もある。ただし毎年のように日本で国際大会を開催し、ホスト国である日本には戦いやすい環境が用意されていたにもかかわらず、一向に勝ち星には結びつかなかった。それを思えば、5勝を挙げての予選通過は評価に値する成績と言えるのではないだろうか。

 予選ラウンドで接戦を制することができた要因のひとつには、センターを中心に攻撃を組み立てたセッター、朝長孝介のトス回しが挙げられるだろう。2年ぶりに代表に復帰したスーパーエースの山本隆弘が出場全選手中、スパイクの総得点で5位に入る成績を収めた。その山本の活躍には、第2次ラウンドまでに60%の高いスパイク決定率を残したセンター齋藤信治、山村宏太の働きが大いに影響している。

 データを参考にブロックシステムを決める近代バレーでは、相手ディフェンスを混乱させ、いかにブロックの少ないポジションから攻撃できるかが勝敗の鍵を握ってくる。2年前のアテネ五輪最終予選、日本の得点源だった山本の前には常に複数のブロックが立ちはだかっていた。最後は山本が捕まり、日本は敗れた。どんなに優れたアタッカーでも、たった一人の力には限界がある。

 今大会、セッターの配球がもたらした効果について山本は語る。

 「相手のミドルブロッカーがセンターをマークしているので、自分についてくるブロックが1枚になる場面が多かった。センターに決定力もあるので、自分一人が何とかしなければという気負いも消えました」

 ここぞという場面で山本を生かそうと、ゲームプランを立て、センター攻撃という布石を打った朝長の勝利だった。

 一方で悔いも残る。セルビア・モンテネグロ、ロシア、フランスなど世界ランキング上位国との対戦は、現在の日本の力を測る上で重要な判断材料だと考えられていた。しかし相手に飲まれたせいか、予選で見せた大胆な戦術は影をひそめ、センターの打数も大幅に減った。

 「大会終盤は練習を積んできたコンビネーションの、半分も使うことができませんでした。ブロックをセンターに引き付けて、サイドやバックプレーヤーにどれだけ速くて正確なトスを供給できるかが、今後の自分の課題です」(朝長)

 順位決定戦を経験したことで、新たな課題も見つかった。大会を通じ、形勢逆転の切り札として活躍した千葉進也は言う。

 「ゲームの流れを左右する場面で確実にポイントを重ねてくる相手に対し、逆にこちらはミスをして、流れを引き寄せるチャンスを逃してしまう。それが強豪との差です。日本は、勝負所で決められる個人の技術はもちろん、チーム全体の勝機に対する意識を育てなければいけないと思う」

 五輪予選までの2年足らずで、世界との距離をどこまで縮めることができるのか。今大会のベスト8がフロックだと言われないためにも、全日本にとっては真価を問われる戦いが続く。

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