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プレ五輪で真央が見せた“弱点”と“真価”。 

text by

田村明子

田村明子Akiko Tamura

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photograph byTsutomu Kishimoto

posted2009/02/26 04:20

プレ五輪で真央が見せた“弱点”と“真価”。<Number Web> photograph by Tsutomu Kishimoto

 バンクーバー五輪のテスト大会である四大陸選手権で、浅田真央は3位に終わった。

 「まだこれからやらなくてはいけないことがたくさんある。世界選手権ではもっといい演技をしたいです」

 会見でそう語った浅田は、沈んだ表情を隠しきれない様子だった。

 今季はSPで失敗し、フリーで挽回というパターンを繰り返してきた。本調子ではない理由の一つは、今季は弱点克服のため、様々なチャレンジをしているからだ。

 「選手にとってそれまでやってきたことを変えるのは容易ではない。でも真央は男子並みに練習した」

 四大陸選手権には家庭の事情で同行しなかったタチアナ・タラソワ・コーチだが、1月末にヘルシンキで取材に応じこう語った。

 今季の浅田は、昨シーズン減点対象となっていたルッツジャンプのエッジの修正などに、前向きに取り組んだ。だが不調のときは、意識しすぎて失敗する。この大会でもSPでルッツが2回転になり、6位という厳しいスタートだった。

 「真央が6位スタートという結果に、驚いていますか?」

 そう聞かれたキム・ヨナは苦笑すると、通訳を通してこう答えた。

 「みんな私に真央のことを聞きたがる。でも一人の選手を意識しているわけではありません」

 そう言いながらも、意識していないわけはない。キム・ヨナはフリーで苦手な3ループに挑戦。転倒してフリー3位になったが、総合でトップを保って優勝した。あえてここで冒険することを選んだのは、SPで真央を14点以上リードしていたからに違いない。キムが怖い選手は他にいないはずだ。

 一方追い詰められていた真央は、3アクセルを一度にし、苦手なルッツとサルコウを避けるなど、守りに入った着実な演技でフリーは1位。総合3位で表彰台にたどり着いた。

 現在の女子で抜きん出た資質を持つ二人だが、タイプは違う。

 「キム・ヨナのジャンプは、まるで男子のように思い切りがよく高さも距離もある。一方浅田選手のジャンプは、ふんわりと蝶のように上に上がる女性らしいジャンプ。どちらもそれぞれ良さがある」

 今回女子のジャッジを務めた藤森美恵子氏はそう語る。

 二人の演技を比べると、高い表現力はほぼ互角。ジャンプの難易度は浅田が若干上と言える。だが、回転不足の判定チェックが厳格になった今季、高度なジャンプは以前にも増して大きなリスクが伴う。

 「今の国際スケート連盟(ISU)の審査方向は、難易度よりも美しく完成されたジャンプを求める方向に来ています」(藤森氏)

 昨年度の世界選手権で、4回転を跳ばない男子チャンピオンが誕生した事実も藤森氏の言葉を裏付けている。真央の勝利の鍵は連続ジャンプなどの完成度をより高めることだ。

 「今季の浅田選手はスケーティングにより深いエッジを組み込んでいる。これが完成したらジャンプの成功率もさらに上がるはず。タラソワ・コーチは長期的視野で、彼女を育てている」(同前)

 3月には世界選手権が開催されるが、長期的視野の先にあるのはもちろん来年のバンクーバー五輪である。

 「今シーズンは真央にとってチャレンジの年。でも来季は、冒険はしません」

 タラソワ・コーチはそう語っている。

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