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NFLは戦国時代。王者を倒すのはどこ? 

text by

渡辺史敏

渡辺史敏Fumitoshi Watanabe

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posted2006/09/28 00:00

 9月7日、米アメフトNFLが開幕した。スーパーボウル制覇の最有力候補は、やはり昨季5度目の王座に就いたスティーラーズだろう。

 しかし、名門ドルフィンズとの開幕戦で、王者はいきなりピンチに見舞われる。エースQBベン・ロスリスバーガーが欠場を余儀なくされたのだ。

 24歳の若き司令塔は、一昨年のルーキー時代から攻撃の中心として活躍し、QBとしては史上最年少でスーパーボウルリングを手に入れた。今年6月にバイク事故を起こし重傷を負ったものの、驚異的な回復力により開幕戦での復活劇が期待されていた。だが、波乱はそれだけでは終わらなかった。開幕4日前に、急性虫垂炎を起こして手術。更なる不運が彼を襲ったのである。

 この緊急事態に急遽先発をまかされたのが控えQBのチャーリー・バッチ。ここ4年、ほとんど実戦でのプレー機会がなかっただけに心配されたが、落ち着いたプレーを見せる。一時はリードを許す展開となったが、第4Qにバッチのタッチダウンパスで逆転すると、守備陣が2インターセプトを奪い、結局28対17で勝利した。ヘッドコーチのビル・カウワーは「チームがパニックに陥ることなく、跳ね返したことは表現しがたい」と喜びを語った。不測の事態に耐えうる選手層の厚さを改めて確認できたスタートに、確かな手応えを感じたに違いない。

 対抗馬となるのは初制覇に挑むコルツである。ずば抜けた能力を持つQBペイトン・マニングを中心に、ここ数年、爆発的な得点力でNFLを席巻してきたが、4年連続プレーオフで敗退。今季こそスーパーボウル出場の悲願達成なるか、と期待されているチームだ。

 ただ、開幕のジャイアンツ戦は、“悲願”とは別の意味で全米の注目を集めることとなった。相手の先発QBをペイトンの弟イーライが務め、NFL史上初の兄弟QB対決となったからである。マニング一家は父アーチーも元NFLの名QBで、ペイトンもイーライもドラフト1位指名を受けたサラブレッド家族であることも興味を引いた。

 試合は、ペイトンが冷静にパスを決め、ゲームをコントロールする一方、ジャイアンツはイーライとともにRBティキ・バーバーが絶好調で、多角的な攻撃を展開して対抗する。しかし、最後は経験の差が出て、コルツが26−21で逃げ切った。

 ペイトンは試合後“マニング・ボウル”と呼ばれ、特別視されたことに「ちょっと違うと思う」とあくまで通常の試合の一つだと強調した。しかし「イーライを常に意識していた」と、普段見せない照れ笑いを浮かべ饒舌に話す姿に、兄弟で戦うことができた喜びがあふれていた。

 この2チームの後を追うのは、ベンガルズか。昨季のプレーオフで、膝に大怪我を負った大型QBカーソン・パーマーが奇跡的な回復を見せ、戦力は充実している。また、過去5年間で3回頂点に立っているペイトリオッツは、名将ビル・ベリチックの下、システム力で勝つ体制ができているのが強みだ。さらに、エースQBに走っても良し投げても良しのスーパーアスリート、マイケル・ヴィックを据えるファルコンズもまとまりが出てきた。

 これら上位チームの実力差は小さい。昨年のスティーラーズも、最下位シードから頂点に立った。今季のNFLは、戦国時代へと突入する可能性を十分に秘めている。

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