NumberEYESBACK NUMBER

全仏11回目の挑戦で
フェデラー悲願達成。
~次のウィンブルドンの見所は?~ 

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

PROFILE

photograph byHiromasa Mano

posted2009/06/20 06:00

全仏11回目の挑戦でフェデラー悲願達成。~次のウィンブルドンの見所は?~<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

フェデラーは現在、世界ランキング1位のナダルに次ぐ2位

 ロジャー・フェデラー(スイス)が27歳で史上6人目の生涯グランドスラム(四大大会全制覇)を達成し、全仏オープンの幕が閉じた。表彰式でセンターコートに流れるスイス国歌を聴きながら、男子シングルスの覇者は静かに涙を流した。会見では「自分の成し遂げたことを誇りに思う」と語り、喜びを噛みしめた。

もうしばらく続きそうなフェデラー、ナダルの2強時代。

 無敵と思われたフェデラーにも凋落の兆しがあった。1月の全豪では決勝でラファエル・ナダル(スペイン)に惜敗し、悔し涙を流した。このところ世界ランク3位のアンディ・マリー(英国)や4位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)にもなかなか勝てず、フェデラーの名前を聞いただけで相手が震え上がったのは過去の話になっていた。引退の時期を考え始めているのではないか、という見方さえ広がり始めていた。だが彼は踏みとどまった。この優勝でピート・サンプラス(米国)の四大大会通算最多優勝記録「14」に並び、史上最強を改めて印象づけた。

 この優勝は男子テニスにとっても朗報と言えそうだ。男子テニスがかつてないほどスリリングな時代を迎えているのは、ナダル、フェデラーの2強が並び立っているからだ。この優勝はフェデラーを勇気づけたに違いない。2強時代はもうしばらく続くことになるだろう。

絶対的な女王不在の女子テニス界に危機感。

 男子以上に危機感を強めていたのが女子ツアーだ。昨年春に、ジュスティーヌ・エナン(ベルギー)が世界ランク1位のまま引退。空位となった女王の椅子にマリア・シャラポワ(ロシア)、アナ・イバノビッチ(セルビア)らが入れ替わり立ち替わり座ったが、いずれも在位は短かった。現在の1位、ディナラ・サフィナ(ロシア)も四大大会ではまだ優勝がない。つまり、圧倒的な実力と実績を持つ女王が不在なのだ。

 大会期間中に、エナンが会場のローランギャロスで記者会見を行なった。元女王は「今の女子ツアーの問題はボス(支配者)がいないこと」と語ったうえで、ツアーの柱となるべき選手としてサフィナの名を挙げた。昨年の全仏と今年の全豪で決勝に進出し、この4月に世界ランク1位となったサフィナは、確かに「真の女王」に一番近い選手だ。

 今大会でも力強い試合内容で勝ち上がった。しかし、決勝ではまったく力を出せず、同じロシアのスベトラーナ・クズネツォワに敗れ去った。サフィナは会見で「勝ちたいという思いが強すぎて、自分に重圧をかけてしまった」と話した。四大大会で優勝してこそ真の女王という自覚は、彼女にもあったはず。その重圧に押しつぶされてしまったのだ。

 全仏で涙を飲んだ選手たちにも、すぐに雪辱のチャンスがある。全仏閉幕からわずか2週間後にスタートするウィンブルドンだ。

男子の2強対決と、サフィナによる女王の証明が見所。

 期待はナダルとフェデラーの2強対決だろう。全仏では本来の動きが見られず、4回戦でロビン・ソデルリング(スウェーデン)に完敗。大会史上初の5連覇を逃したナダル。そのナダルに昨年のウィンブルドンで6連覇を阻まれたフェデラーも、リベンジに燃えるだろう。気がかりはナダルのひざだ。連戦で古傷が痛み出し、ウィンブルドンの前哨戦を欠場するという。万全の状態で開幕を迎えられれば、昨年の歴史的な決勝の再現が期待できるのだが。

 女子は、サフィナの再挑戦が最大の焦点となる。しかし、芝ではウィリアムズ姉妹(米国)も力を発揮する。真の女王となるためには、険しい道を進まなくてはならない。

■関連リンク► フェデラーが逃れたモンスターの呪縛。 (2009年1月6日)
► ボルグからフェデラーへ。受け継がれた偉大な歴史。(2007年7月26日)
► 今年もフェデラーを阻んだ赤土の魔力。 (2007年6月28日)

関連キーワード
ディナラ・サフィナ
ラファエル・ナダル
ロジャー・フェデラー

ページトップ