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崖っぷちヴェルディ ラモス続投の真相は? 

text by

三浦憲太郎

三浦憲太郎Kentaro Miura

PROFILE

posted2007/05/31 00:00

 連敗を7でストップさせた翌日、東京ヴェルディ1969のクラブハウスにはJ2としては異例とも言える70人の報道陣が詰め掛けていた。続投の決定を受けたラモス瑠偉監督は「辞めるのは簡単。投げ出すのも簡単。でも、オレは男だよ。サムライなんだよ」と吼えた。潔い辞任よりも、敢えて試練を選ぶ。今後も続くであろう苦難の道に挑むことを宣言したのだ。

 普通、どのクラブも7連敗となれば解任は止むを得ない。大型補強を敢行して戦力は整っているだけに、監督の手腕を疑われても仕方のない状況だった。さらにこの名門クラブには「5連敗」で監督解任という暗黙の了解もある。過去、ニカノールやエスピノーザらに適用されてもいる。しかし、フロントはこの不文律を破った。6連敗して迎えた水戸、京都の2連戦でどちらかに勝てば基本的に解任はなかった。水戸に予想外の1−5で大敗したために、京都戦では3点差以上の勝利を義務付けるしかなかったのだが……。何とか続投の可能性を探るフロントの先に答えありの奔走ぶりがうかがえた。

 どうしてもラモス監督でなければならないクラブのお家事情があるのだ。J2に降格して平均観客動員は1万人を割り、赤字経営が続く。人気、実力の両面でクラブの黄金期を築き「ミスター」と呼ばれたラモス監督だからこそ、スポンサーを確保できている実情もある。萩原敏雄社長は「クラブ経営の問題で存亡がかかっている」と切実に訴える。営業担当の田中尚雅取締役も「昨年、横浜の岡田(武史)監督が辞めて、スポンサーがたくさん離れた。ウチもラモス監督でなければ同じようになるでしょう。おじいちゃん、おばあちゃんでもラモス監督は知っているから。野球で言えば王、長嶋」と監督効果を強調する。

 指揮官のカリスマ性で元日本代表の10番名波浩を始め、J1のレギュラークラスがズラリと揃ったのだ。資金難に苦しむクラブだけにラモス監督でなければ、戦力も整わないという事情、サポーターからの熱烈な支持など、成績だけでは測れないものがある。さらに「ラモス監督でJ1に上がることに意味がある」と萩原社長が明かすように「名門復活」というビジョンまである。

 人気凋落に歯止めの効かない状況でクラブ価値を向上させるためにはいったい何が必要なのか。フロントは黄金期のような攻撃型で魅せるサッカーこそがサポーターの熱狂を生み出すと、結論づけている。ラモス監督も「勝てばいいのか。守ってカウンターのサッカーに魅力はない」と叫ぶ。東京という娯楽の多い都会で人々の耳目を再び集めるのは容易ではないだろう。だからこそかつて日本中を席巻したヴェルディスタイルの復活にこだわる。

 ラモス監督は「オレ以上にこのクラブを愛している奴はいない。オレには緑の血が流れている」と言うほどのヴェルディスタ。逆風にも前を向き「選手のプライドがこのクラブを支えて来た。誰のためでもない。自分のためにやる。それだけですよ。それを全員が持てば面白いサッカーが出来る。そうすれば今は隠れているサポーターも戻ってくるんだよ」ときっぱり言い切る。

 京都戦では勝利したが、アウエーの山形戦に引き分け、浮上のきっかけはつかめていない。しかし、今回の解任騒動も「連敗を止めるためだけの議論だった」と萩原社長は笑い飛ばす。ヴェルディはラモス監督と心中する覚悟なのだ。

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