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5大会連続でW杯へ。なでしこたちの次の夢。 

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松井浩

松井浩Hiroshi Matsui

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posted2007/04/05 00:00

 なでしこジャパンがメキシコとのプレーオフを制し、中国で開催(9月10日〜30日)される第5回女子W杯への出場権を獲得した。

 3月17日に標高2600mのトルーカ(メキシコ)で行われた第2戦は、空気の薄さとメキシコの猛攻に大苦戦。試合には1対2と敗れてしまったが、10日に2対0で完封勝ちしていたホーム(国立競技場)での第1戦と合わせ、なんとか5大会連続の出場をたぐり寄せた。

 「試合が終わってウルウルしてしまった。ホッとしました」と最前線で走り回っては顔をゆがめていたFW荒川恵理子が言えば、チームを引っ張ったMF澤穂希も、「(出場権獲得が)決まった瞬間は嬉しかったけど、試合は本当に苦しかった。特に肺が……。皆泣いててつられて泣いちゃった」と話し、選手たちは一様にホッとした表情を見せていた。

 このなでしこジャパンが日本中の注目を集め、ひと際輝いていたのは3年前のこと。 '04年4月に日本で開催されたアテネ五輪最終予選で、北朝鮮を3対0と撃破。ゴールデンタイムに生中継され、視聴率は16%を超えた。五輪本番はベスト8止まりだったが、史上最強と言われた選手たちは「次の目標は世界でメダルを取ること」と自信にあふれていた。

 当時の実力を思えば、そもそも昨年7月のアジア予選で出場権を逃し、北中米・カリブ海地域3位のメキシコとプレーオフを戦っているのが不思議な話。3年間でチーム力が低下した最大の原因は、彼女たちの自信が粉々に破壊されたことにある。

 強いなでしこジャパンを作ったのは、当時の上田栄治監督の手腕だった。その上田監督がアテネ五輪後に勇退。後を継いだ大橋浩司現監督は、また一からチーム作りを始めた。選手の起用やフォーメーションから、いろいろと試した。新監督としては当然の手順だったが、選手にとってはどれも上田ジャパンの初期に経験していたことだった。「世界の強豪とたくさん試合をしてもっと強くなりたい」という選手たちの思いとは、大きなギャップがあった。

 やがて、上田前監督に徹底的に鍛えられて身につけた体のキレが失われていった。ポジションの変更や新戦力の投入が相次ぎ、主力からさえも「私、次は代表に呼ばれるかな」という声が漏れるようになった。世界で戦えるという自信が揺らぎ、チーム力はみるみる低下。昨年のアジア予選では、焦っては自滅する過去の姿に戻っていた。

 しかし転機となったのが、上田前監督の復帰だった。湘南ベルマーレ監督を成績不振で辞任すると、昨年9月サッカー協会の女子委員長に就任。これをきっかけに選手たちの顔つきが変わり、昨年12月のアジア大会前の長期合宿でやっとチームがまとまってきた。成績は2位だったが、決勝では北朝鮮と互角に戦えるまでにチーム力が回復していた。

 この頃には、大橋監督の目指すサッカーがようやく選手たちに浸透。今回のメキシコとのプレーオフ初戦では大橋監督の選手起用や指示が、とても効果的だった。また、上田女子委員長は、監督時代と同様相手チームの分析とチーム内の雰囲気作りに大きな力を発揮。今回の出場権は、言わば上田・大橋体制でつかんだものだった。

 常々語っている選手たちの夢は、世界最強。それを実現するには、9月の女子W杯や来年の北京五輪で好成績をあげるのはもちろん、今から'12年ロンドン五輪までも見据えた長期の強化プランが必要ではないか。

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